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新刊サンプル

  • 執筆者の写真: toku-10-9
    toku-10-9
  • 2021年8月14日
  • 読了時間: 2分

新刊「たまきはる」サンプルです。



竜の子


「オンバーン」


 大好きな貴方が俺の名を呼ぶ。いつだって貴方は格好良くて、俺の目標だった。

 ――否、これからもずっと。

 俺の腕の中で、そのひとは力なく倒れ込んでいた。太陽のように輝く瞳をわずかに覗かせ、こちらを見上げている。


「……すまない。お前を置いていくなんて、兄失格だな……」


 そんなこと絶対ないのに。反論するようにぎゅうっと彼を抱き締める。


「……苦しいぞ」


 小さく笑いながら、力強く大きな手で額を撫でてくれた。俺は彼にそうされるのがいつも嬉しくてたまらないのに、ああ、もう我慢できないや。


「男だろう。泣くんじゃない」


 腕をさらに伸ばし、頭をぐいと引き寄せられた。彼の肩口が濡れる。


「オンバーン」


 少し掠れた彼の声。聞き逃さないよう、いつでも思い出せるよう、耳に焼き付ける。


「なあに、ルチャ兄」


「……大きくなったな」


 優しく触れる彼の手に、頬を擦り寄せた。


「俺がいなくても平気だな?」


「……うん、大丈夫」


 ちょっぴり、嘘をついた。本当はずっと一緒にいてほしい。ずっと背中を追いかけていたい。けれど、俺も彼みたいに格好良くありたいから。

 良い子だ、と彼は小さく笑う。


「もう子供じゃないよ……」


 自分が泣いているのか、笑っているのかわからなかった。彼を抱く腕に力を込め直す。


「……ルチャ兄?」


 今まで見たことのないくらい、穏やかな寝顔だった。腕がぱたりと、落ちた。

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