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三度目の正直

「ウオノラゴン」


 きみがぼくを呼ぶ声がする。額を撫でる、ほんのり温かな手。ぼくをまっすぐに見つめている、きらきら輝く瞳。

 かつてこの姿で目覚めた時、ぼくを見上げていたあどけない表情と重なった。

 あの頃と比べると、きみはずいぶん背が伸びた。口を開けばすぐそこにあった頭も、うんとのびをしないと届かない。


 少しずつ身体から力の抜けていく感覚。もう、ぼくは永くないのだろう。だって二回目だから。一度経験したことを間違えるはずはない。

 ──ああ、いきたくない。一度目も漠然と感じていたけれど、今回は明確に、そう思った。

 この目を閉じてしまえば、きみと広い世界を巡ることも、きみを背中に乗せて駆けることもできない。前の記憶が霞んでしまうくらい、きみと過ごす時間は眩しくて。


 もし三度目の生を与えられたとしても、きっと次の世界にきみはいない。

 それならば化石のまま。思い出が上書きされないまま。静かに眠れることを願って。

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