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アイスクリーム・シンドローム

 思い返せば彼とも長い付き合いだ。互いに遠慮するような仲ではない。

 けれど、時々胸に浮かぶことがある。その背に留まり、たわいもない話をして、彼の傍で眠る。俺にとっては何よりも大切なこと。

 しかし、彼の方はどうだろう。俺と過ごす時間なんて、取るに足らない些細なものだろうか。

 彼の隣。そこにいるのは自分だって言いたくて。軽い独占欲。この気持ちを口にすることができれば、どんなにいいだろう。


「行くぞ、ムクホーク」


 俺の気持ちを知ってか知らずしてか、彼はこう言って俺を頻繁に連れ出す。

 目に焼き付く青空と向日葵畑。雪を染める椿の深紅。数え切れないほどの彩。

 そして、屈託なく笑って俺を見つめがら彼は言う。


「お前と見たかったんだ」


 ああ、その言葉に、俺がどれほど救われているか。

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