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紅葉より、

 ひらり。

 鮮やかに色付いた葉が一枚舞って、ルカリオの鼻先に落ちた。その色は奇しくも、彼の瞳と同じ紅色だ。


「……きれいだ」


 手に取ってまじまじと眺めるその目は静かに輝いている。彼の、何か新しい経験をした時の反応はとても微笑ましい。


 ひらり。

 ネギガナイトの目の前にも、紅が落ちてきた。

 秋空に葉が舞う光景は、ネギガナイトも好ましく感じる。

 ──最も、野生の頃は紅葉を眺める余裕すらなかったが。


 ひらり、ひらり。

 ウオノラゴンは、絶え間なく降り続ける葉を目で追っていた。


「きらきら……」


 やがて小さく呟き、大きな口を開けてぱくりと葉を飲み込んだ。


「……おいしいのか?」


 満足げに咀嚼するウオノラゴンに、ルカリオは目を丸くしている。


「……ふむ」


 ぱく、ぱくと舞う葉を食べていくウオノラゴンの姿に、ネギガナイトは傍らに置いていた剣を手に取り──紫電一閃!

 落ち葉がまっぷたつに割れる。それを傍目に、ネギナイトは切先を見つめた。

 不規則に舞う葉を正確に狙うのは、なかなかに難しい。


 ──面白い。


 不敵な笑みが漏れ、ネギガナイトは次々に剣を振るう。

 唖然とそれを眺めていたルカリオだったが、やがて目を輝かせ、葉に蹴りや突きを繰り出し始めた。

 座って紅葉を眺めるのも良いが、やはり身体を動かしている方が、自分達の性に合う。

 散った葉の欠片を払いながら、ネギガナイトはそう思った。


 ──もっと葉が落ちないかと木を揺らし始めたところで、ピカチュウの電撃が落ちたのは別の話である。

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